「朱、ここ何でこうなるの?」
 そんな事教師に聞けよ。
「ここの意味わかんないんだけど」
 少しは自分で考えろ!
「聖二」
「何だよ」
「顔、怖いよ」
「……」
 地獄のテスト期間がようやく終わった。そして、終わってから気がついた。……彼女は頭が良いのだ。
 全教科90点以上。英語に関しては満点だ……。それだから当然、みんな彼女に聞いてくる。
 ただ、純粋にそれだけなら良いのだが、中には下心のある奴までいるから質が悪い。
 そして彼女はそれに気付かないから余計に目が離せない。
「そんな顔しなくたって大丈夫だろ」
「……本当にそう思うか」
「……」
「……天然」
 横で牧がボソッと呟いた。
 そうだ。本人は気付いていないが、彼女は天然だ。だから危なっかしいのだ。
「……大丈夫かな」
 その場にいた全ての人間の心からの不安だった。