今の時期、俺の周りはみんな焦っている。そして、俺も例外ではない。今俺たちはテストという悪魔に追われていた。
「祐二、ここわかる?」
「お前、こんなんもわかんねえの?」
「うるせーよ。早く教えろよ」
「それが人に物を頼む態度かよ」
「いいから早く……って、何だよ、牧」
 何か視線を感じて見ると、牧が少し驚いた顔でこっちを見ていた。
「いや、何だか昔みたいだなーと思って。微笑ましいね」
 そう言われると俺も何だか不思議な気分だ。まさかまた祐二とこうして話せると思わなかった。
「まあ、牧のおかげって感じか」
「だな」
 牧は訳が分からないという感じだったが、照れたように笑った。その光景が懐かしくて、俺は気持ちよかった。
「聖二!帰ろ!」
 その時、部活終わりの彼女が教室に来た。
「おう!んじゃ、先帰るわ」
「ああ、じゃあな」
「朱を危ない目にあわすんじゃねーぞ」
 祐二の憎まれ口を背に、俺たちは帰った。