「でも、うちのサッカー部の戦力はほとんど先輩たちによるものだったんだ。その先輩たちがいなくなって、うちのサッカー部は弱くなった。それに加えて、祐二の練習が厳しくて、同じ学年の奴も後輩も辞めていった。他の部活から助っ人を頼まなくちゃいけないくらいに。最後の中体連もそんな感じだった。その最後の中体連前に、俺は膝を壊したんだ。もうサッカーが出来なくなった。当然、最後の試合も出られなかった。俺は部活を辞めざるを得なかった。祐二はそのことを怒ってるんだ。祐二にとっては、高校のスポーツ推薦がかかってたから」
「でも、それは仕方のないことじゃん!ケガだったんだから!どうしてそう言わないんだよ」
「……言ってないの?」
「……ああ」
「祐二だって、聖二がサッカー好きなこと知ってるんだからさ、ちゃんと言えばわかるよ!」
「意味ないんだよ!」
 つい声が大きくなってしまった。
「試合前だってわかってたんだ。わかってたのに、絶対に勝たなきゃと思って躍起になったんだ。その結果がこれだよ……。自分の力量もわからないで、練習続けて膝壊すなんて、自己管理がなってないんだよ。きっと祐二だってそう言う」
 祐二はそういう奴だ。
「……だから牧、祐二には黙っててくれ。朱音ちゃんも」
 祐二は自分に厳しいが、サッカーが絡むとだれかれかまわず厳しい。ああ見えて意外としっかりしているんだ。それに……
「それに、祐二のことだ。俺がそんな風に思ってたって知ったら、きっと責任感じると思うんだ。あいつ、ああ見えて友達思いだから」
 俺がそう言うと、牧は仕方ないという風に笑った。彼女も頷いた。
 そして、いつかきっと、祐二に本当のことを、ちゃんと自分の口から伝えると、この時俺は誓った。