「朱、今日暇だよね。部活ないし、別れたし」
「今日は部活ある日だから」
「あ〜か。今日遊ばない?部活終わるまで待ってるし」
「部活の後は友達と遊ぶ約束してるから無理」
 俺と別れたという噂が流れているせいか、ひっきりなしに彼女の所に男子が来ている。
「おい。そろそろ行かないとヤバいぞ」
「ヤバいな」
「行けよ」
「でも、男子が離れないし」
「男だろ!」
 男でも怖い時は怖いんだ!
「朱、別れたんだろ。いいじゃん」
 それにしても、さっきから聞いてれば別れた別れたって。まだ別れてねぇっつうの!
「なあ、聖二!別れたんだよな!」
 彼女を誘っていた男子がこっちに話を振ってきた。多分俺の口から別れたと言わせたいのだろう。
 黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって!
「何言ってんだよ」
「やばっ」
「聖二がキレた」
「誰がいつそんな事言った!」
 こうなったらもう止まらない。
「誰も別れてねえよ!だいたい、そんな根も葉もない噂信じて、人の彼女に色目使いやがって!」
「聖二。聖二!」
 彼女に呼ばれて、俺はハッと我に返った。
 俺、今何言った!?
「落ち着けって、聖二」
 気付くと、もう男子がいなくなっていた。そして、教室中の視線が俺に集まっていた。
「……どうしよ」
 俺の悪い癖だ。一度頭に来るとひどく口が悪くなったり、もっとひどい時は殴りにかかる。周りが見えなくなるのだ。
「ありがとう」
 目の前にいた彼女が笑って俺に言った。とりあえず仲直りは出来たらしい。