「変なんだ」
「何が?」
「彼女が」
 俺は近くに彼女がいないことを確認して、小声で言った。
「……」
「何だよ」
「……おーまーえーはー!またのろけか!」
 どうしてこいつらはこうなんだ!
「違う!人の話を聞け!」
「ったく。何が変なんだよ」
 俺はこの間のデートの事を話した。
「携帯ね……」
「でも、女の子なら携帯見られたくないのって普通なんじゃないのか?」
「いや、それが異常っていうかさ。俺が正面にいても、自分の顔の真ん前で使うんだ」
「でも、ほら。今は普通に使ってんじゃん」
 そう言って、そいつは、彼女を見た。俺たちもそれにつられるようにして、教室の角の自分の席にいる彼女を見た。
 そこにいた彼女は、普通に携帯を開いて、普通に友達に見せていた。
「本当だ」
「だとすると、よっぽどお前に隠したいことがあるか」
「もしくは、友達にメールでお前とのデートを報告して、それについて話してたか、だな」
 俺は開いた口が塞がらなかった。
 どっちにしたって、俺にとっては良い事ではない。それに、もし後者なら、俺に何か不満があったかもしれないということだ。
 その時、あの日の彼女ヲタク疑惑が、彼女の不満疑惑に変わった。