お前は十分役に立ってる。
役に立ってるどころか、そこに居るだけで十分なんだよ。
余計なこと考えんな。
余計なこと考えて、バカなことすんじゃねぇよ。
言ってやりたい。でも言えない。
ムカついた。どこまでもムカついた。
山田、お前ホント……――
「――……え、嵐さん今わたしが死ぬとか思ってます?思ってるっすね?ぷーくすく、れおぱとら」
ケロッとした様子で言った山田を心底殴り飛ばしたかった。
この状況下でよくも雰囲気ぶっ壊せるなコイツ。
ある意味天性の才能だろ。ふざけんな。
ぷーくすくれおぱとらとか面白くねぇから。断じて面白くねぇから。
ホント、山田が相手だといろいろと狂う。
そう、“いろいろ”と。
「言っときますけど、わたし負ける気、しないんすよね」
言いながら、山田は両手をすっと動かした。
その両手はメイド服のスカートを持ち上げる。
太腿に装備されたシルバーが一瞬、月光に光った。
風を切る音、尾を引く光り。
山田の両手には、ナイフとフォーク。
「……さてと」
山田は黒の集団を見つめた。
黒の集団は、このふざけたメイドを見つめていた。
静かな風が吹く。
月明かりが揺れる。
霞んでいく意識の中、俺は彼女の声を聴いた。