もうすぐ死ぬかもしれないというのに、どうしてこうも落ち着いているのか。
この世に未練がないからか。
いや、まだあのバカなメイドをこっち向かせてない気がするし、未練がないわけでもないけど。
じゃあ実感がないだけか。
あぁ、案外それかもしれない。
しかしながら、このリアルな緊迫感と拳銃の音に実感が沸かないとなれば、それは稀に見るバカということになる。
たぶんそうじゃない。
未練がないとか実感がないとか、たぶんそういうことじゃない。
そうじゃなくて。
拳銃がガチャリ、セットされる音が響く。
こちらにカチリ、銃口を向ける音を聞く。
そうじゃなくて。
そうじゃなくて?
……甘ったれた考えだけど、たぶん俺は思っているのだ。
――ガキンッ!!
耳をつんざく金属音。
同時に吹き飛ぶ、拳銃の影。
衝撃に跳ね返り、地面に突き刺さったそれは、月の光に淡く輝いていた。
俺はそれを見て、思わず笑った。実際には、笑えていなかっただろうけど。
……思っているのだ、心のどこかで。
ふざけたメイドが、ここに来ると。
「――すんません嵐さん、超遅れまして」


