そんなバカみたいな病気に、まさか自分がかかるとは思っても見なかった。

すべては山田真子の責任だ。

元凶である山田にどんなツグナイをしてもらおうか。


なんてことを考えるのは、とりあえず、後回しだ。


先ほどから、背後に誰かの気配を感じる。

今の今まで誰も居なかったし、人の気配すら感じなかったのだが、いつの間に。

やっと山田が追いついてきたのだろうか?

いや、だとすればアイツのことだ、気の抜けるような声色で「嵐さーん」とかなんとか、俺の名前を呼びながらちょこまか走ってくるはずで。

そもそもこの気配が山田のものではないことを、すでに俺は認めていて、背後の誰かが必ずしも安全な人間でないことも、なんとなく理解していた。

となれば、ここは走って逃げるのが当然か。

しかし走れば必ず追ってくるんだろうし、追ってこられたところで夜の学園内に逃げ場など早々ない。

ホールに戻ればいいのかもしれないが、残念ながら誰かさんの気配のする方向が、ホールのある側だった。

逃げ込む場所をわかっていての、先回りと言うヤツかもしれない。


だったら管理塔にでも逃げるか。

それは逆に袋のネズミってヤツになりそうだ、なんといってもあの場所、クソ狭い。

逃げるどころか袋小路だ。


じゃあどうする。

別に走り回っても構わないし、1対1なら殴り合いでも構わないが、相手が武器でも持っていればこちらに勝ち目はない。

何より、相手が一人だとも決まっていない。

俺は別に能力者とかいうヤツじゃないし。

なので相手が誰だとか何人居るだとか、そういうことがわからないだけに、逆にその場合を想定しておくのは当たり前のことだった。

想定したところで、武器も何も持っていない俺に、はたして勝ち目があるのかと言えば、限りなくゼロだ。