俺は思わず笑った。

やっぱ、どこに居ても何をしていても、山田は山田だ。


「そう言うと思った」笑みの残る表情で言った。「んじゃ、俺はひとりで抜け出すか」

「そうしてください」山田は続けた。「あーでも、わたしも面倒事はマジ勘弁なんで、たぶんあとから追いかけるかもっす」


そうかよ、と俺は受け答える。

辺りは依然、静寂を保ち続けたままだ。

俺はそんな会場に背を向け、でかい扉に手をかけた。

どこぞのドラマか何かだったら、ここは確実に山田の立場のヒロインと、一緒に逃げ出す場面なんだろう。

しかし、残念ながらそのヒロインが山田では、こうなることもまた一興。

俺にとっては、なんの不満もないシーンになった。


「……またあとで、山田」


振り返って一言残す。

山田は右手を持ち上げて、ひらり、振った。


「はいよー嵐さん」


そんな気の抜けた返事を聞き届け、俺は扉を開けた。

夜の空気が頬を撫でる。

穏やかな風が吹く夜だった。


背中で閉まった扉の向こう。

ようやく聞こえてきたのは、奇声と悲鳴の大混乱。


俺は笑った。

こんなに愉快なパーティーは、きっとどこの世界を探しても、今ここ、聖凰館学園にしかないだろう。

なんて思って、また笑った。