「彼女大理石好きなんだから許してやんなよ」
「お前は当事者じゃねーからンなことが言えんだよ」
「久宮、こけさせられたんだっけ?」
「黙れ。」
ソッコーで言うと、宮埜は笑った。
「それでも好きなんだろ」
俺はパソコン画面を見つめる。
そこに山田の姿はもうなかった。
「……アイツの大理石好きには負ける」
答えると、宮埜は声を上げて笑った。
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私立聖凰館学園には隣接されたもうひとつの学校がある。
私立聖凰館学園総合育成科。
この学校が金持ちばかり集まるからか、執事やメイド、運転手などのいわゆる“お手伝いさん”を育成する学校が隣接されている。
校舎はこちらの本校と対になる作りで、間に挟まれる形で作られているグラウンドやホールはどちらも合同で使っている。
その育成科と本校は2学期制で、前期と後期に必ず育成科はランダムで選ばれた本校の生徒の家に、学期が終わるまで実習のために配属されるという制度がある。
で、この後期、俺の家である久宮家に配属されたのが、山田真子というわけだ。
山田本人は俺を知らなかっただろうが、俺は山田真子を知っていた。
書庫で見たのだ。
両学校の中間、ホールのそのまた後ろに建っている、イギリスのビックベンに似た作りをした書庫だ。
壁一面が本棚と言う、かなりファンタジックな書庫で、山田真子を見た。