椅子ごとくるりと振り返り、俺を見るなり宮埜は愉快そうに笑い始めた。
理由はわかる。
今の俺が、今日の服装に似つかわしくない表情を浮かべているせいだろう。
今日は聖凰パーティーなんつーのがある日だ。
心底参加したくなかったが、これは強制参加なのでしかたない。
まあ顔を出せば途中で抜けられるので、いいのか悪いのか、と言ったところだ。
そんなわけで、今日の服装はそれ相応の服で、俺が着ているのは決して制服ではなかった。
なのでさらに、その上にある不機嫌極まりない顔が、宮埜にとっては腹を抱えたくなるくらい面白かったに違いないわけだ。
「久宮、お前は笑顔の作り方を知らないな?」
「アホか。それくらい知ってる」
「じゃあちょっとは愛想いい顔にしておけよ。なんたって、今日はパーティーだからな」
「お前に対する笑顔を持ち合わせてないだけだから。」
「うわひっどー!時間が空けばここに逃げてくるお前をかくまってやっている親切極まりない俺に対する笑顔を持ち合わせていないとかひどすぎる」
「うざい黙れ。」
宮埜の嘆きを一蹴してから、俺はドアを後ろ手に閉め、いつもの調子で椅子に座った。
机に頬杖をつき、パソコンの画面を眺める。
今日も今日とて、学校中の映像が所狭しと並べられていた。
「……宮埜、お前はパーティーの日も引きこもりか」
「そうだよ。お前等が仲睦まじく踊ってたりする間、俺はこの寂しい牢獄のような場所でひとり、お仕事だ」
「ご愁傷様」
「そりゃどうも」
宮埜は肩を竦め、くるりと椅子を回した。
あーできれば俺もここで引きこもっておきたい。めんどくさい。