俺が通っているこの高校、名前が『私立聖凰館学園(せいおうかん)』という。
名前ですぐさまわかるだろうが、金持ちの通う学校だ。
そんで金持ちが通ってるもんだから、金に関わる問題があったりするわけで。
だからこの管理棟がある。
金の管理から生徒、教師、来客者まですべて監視している。
その仕事を受け持っているのがこの見た目20歳の宮埜(みやの)というヤツだ。
実際の年齢はもっと上らしいが、頑として教えようとしないので見た目20歳で説明している。
っつーか宮埜の年齢とか正直言ってどうでもよかったりする。
そんな宮埜となんで知り合ったかと言えば、まあ追っかけを撒いているときだ。
この学校は、真上から見て玄関ホールの左がA棟、右がB棟になっている。A棟が学年教室などで、B棟が生徒会室や実験室などを集めた場所だ。
管理棟はその人気がないB棟の裏に建てられている。
つまり俺は隠れ場にそこを選んだわけだ。
で、らせん階段を上ってったら宮埜が居た、という成り行きで知り合いになった。
いつ来ても宮埜はここに居るんで、たぶんここに引きこもっている。
「……お、噂をすればってとこかな」
パソコン画面を見ながら、宮埜が笑みを浮かべてぼそっと言った。
「何がだよ」と聞くと、宮埜はパソコン画面をくるっとこちらに向けた。
画面には、見慣れたちっこい姿が映っている。
言わずもがな、山田真子だった。
「……遅刻寸前じゃねーか。」
「誰かさんが仕事増やしたからじゃないの?」
「アイツが自分で増やしてるだけだろ」
「あんまイジメないであげろよ」
「むしろこっちがイジメられてる気ィすんだけど」
大理石ピッカピカに磨かれて滑らされた時とか特にな。