どうして懐かしい気がしたのか。

その本が、想いの詰まった本だからか。

それのなんとなく、違うような。


あぁでも、なんでもいい。



それまでゆるりと瞬きを繰り返していた俺は、自然と瞼を閉じた。


物語は進んでいく。

ゆったりと、午後のやわらかな日差しの中を歩いているような速度で。


服の布越しに伝わる、彼女のぬくもりと、朗読をする声。

もう瞼を開けることすらままならない。

もっとこの声を聞いて居たいのに、睡魔がどうにも離してくれない。

呼吸が、心音が落ち着いて行く。

自分でももう、起きているのか眠っているのか、それすらわからない、夢と現実の狭間。


そうして眠りに落ちる間際、ふっ、と。

彼女の小さな手が、俺の頭を、頬を撫でた。



「――……おやすみ、嵐」



微かに聞こえた声が、その手が。

あまりにも優しかったから。


つい、ひとしずく、涙をこぼしてしまった。




ような、気がした。