隣の彼女がメイドだったんだけど。





山田がそれをどういう意味で受け取ったのか。

とりあえず、肯定という意味では、受け取ったようだ。


「ちゃんと寝ないと、よくないっすよ」

「……わかってる」

「ふみんしょーってヤツっすか」

「さあな」

「まあ、低血圧の人って寝つきも悪いっていうっすからね」

「……へえ」

「今眠いなら、今寝ちゃったほうがいいっすよ」

「……いや、寝ない」


この会話をしている間、俺は一切顔を上げなかった。

寝不足ってヤツは面倒なものだ。

ダルイし、眠いし。顔すらろくに上げられない。

山田はそんな俺の状態に呆れたのかなんなのか、何も言わずに傍を離れた。

そのまま開けっ放しのドアから出て行くのかと思えば、ドアの閉まる音さえ聞こえない。

じゃあ何してんだ、と思って、あーでもそんなのどうでもいいか、と瞼を閉じたまま動かずにいた俺は。


「嵐さん嵐さん」


くいくいと、名前を呼びながら俺の腕を掴んで引っ張る山田に、致し方なく顔を上げた。

素で可愛いことしてくれんなコイツ、とか思ったが、眠さとダルさに思考が負ける。

黙って山田を見上げると、何故か山田は一冊の本を胸に抱えて立っていた。


「わたしはいまとてもいいことを思いついたわけっすよ」

「…………」

「わたしが読み聞かせしてあげるっすわ」

「…………。は?」


聴き間違えかと思った。