それはどうやら、山田にも聞こえていたようだ。
「え、なんすか、わたしなんかしたっすか?」
トレイを机に置きながら、いぶかしげに尋ねてくる。
俺は首を横に振って見せた。
「……いや、別に、お前は何も」
「はあ、そうっすか」
山田の返事を聞き流し、頬杖をつく。
それだけでもなんとなく眠さに耐えられず、頬杖をついていた手から、腕を伝ってずるずるとうなだれるように、参考書の表紙に額を押し付けた。
眠い。けれどここで眠れば、夜はもっと眠れなくなるに違いない。
まったくの悪循環だった。
「……嵐さん」
ずっと同じ場所に居たらしい山田が、いつもの声色で俺を呼んだ。
俺は参考書から顔を持ち上げることもしないまま、「なんだよ」と受け答える。
すると山田は「もしかして」と。
「もしかして嵐さん、超眠いっすよね?」
なんだその質問。アホか。
「……あぁ、うん。見ての通りな。」
「昼飯食ったら眠くなるタイプの人間っすか」
「いや、大抵の人間はそのタイプだと思うが。」
体の作り上な。
そう付け加えて口を閉じると、山田は少しの間を開けて、言った。
「それとも夜、眠れてないとかっすか」
この問いには、答えてやらなかった。


