隣の彼女がメイドだったんだけど。





山田は口を尖らせたまま、「どこで食べるんすか食堂っすかここっすか」と尋ねてくる。

俺はベッドに寄り掛かった状態で、頭を少し右に傾けた。

少し考えてから、口を開く。


「……親父は?」

「えー、おやじさんっすか。朝一でどっか行きましたけど」

「ふうん」

「で、どうするんすか?」

「……食堂行くわ」

「りょーかいっす」


山田が部屋のドアを開けた。

そこで待てば何も言わないっつーのに、さすが山田真子というべきか、開けたドアからさっさと出て行ってしまう。

待っとけよ。首輪つけんぞ。

俺はため息とともに立ち上がり、開けっ放しのドアから廊下へと出た。


今日も相変わらず、家の中は従者以外に人は居ない。

この間の一件から親父は家に帰ってくるようになっていたが、早朝に出ていき、帰ってくるのも結構な夜中だ。

昔と変わらない。

なにひとつ変わっちゃいない。

アイツはそういう人間だ。


そんな思考。損な思考。

前を歩く山田を見据える。

それだけで少し、自分の荒んだ部分が薄らぐ気がした。気がしただけだ。


山田は大理石をきょろきょろと見つめ、小指の先ほどの汚れを見つけてはいちいちモップをかけようとするので、俺はその首根っこを捕えては岐路に戻す。

ちょこまかと動く山田はホント、小動物だ。