らせん階段を上って行くと見慣れた扉が現れた。
その扉を開けると、待っていたかのように、くるりと椅子を回してこちらを向く、これまた見慣れた顔があった。
「おはよう久宮。今日も黄色い声が聞こえてきたぞー相変わらずモテんなお前」
「幽閉されてるみたいなこの部屋に一日中居るお前と違ぇからな」
「仕事なんだよ」
「めんどくせぇ仕事に就いたもんだな」
「そう言うお前はモテるくせに意中の彼女にはモテないんだってな」
「うるせぇよ。」
赤茶色の髪の毛にカラコンをした見た目20歳の引きこもりに言われる筋合いはねぇ。
狭い部屋中に置かれたパソコンや機材には目もくれず、俺は古ぼけた椅子を引き寄せて無遠慮に腰を下ろした。
背もたれに背を預け、足を組んだらようやく落ち着く。
見た目20歳の引きこもりは、俺を横目にパソコンへと向き直った。
「で、どうよ久宮。自分ちに意中の彼女が配属されたご気分は」
「マジ迷惑」
「へえ」
「他のメイドの仕事全部やるわ床は磨きすぎて滑るわ……あと大理石好きすぎ」
「はっは。まあ一応デキる子だから仕事全部やっちゃうだろうね」
「頭悪いのかいいのかも不明」
「仕事さくさくやってくから成績いいんだろ。頭もいいさ」
「……メイド科で何位?」
「1位独走ってとこかな」
予想はしてたがやっぱりか。
ため息のような深呼吸のような、なんともとれない息を吐いて、傍にあったパソコンの脇に頬杖をついた。
横目に入った巨大なパソコン画面には、この学校の風景がところせましと映っている。
言い忘れたが、ここは管理棟という学園内にある塔だ。