隣の彼女がメイドだったんだけど。





なんてことを考えながら、ベッドに寄り掛かって山田のちっこい後ろ姿を眺める。

山田は俺の視線に気が付いていないのか、それとも無視しているのか、どう考えても前者だろうけど、ひとり本棚を上から下まで見つめて「うむ」とかうなずた。

それから本棚に立て掛けてあったモップを手に取ると、ようやくこちらを振り向いて。


「じゃ、わたしはこれで」

「は?」


すちゃっという効果音でも聞こえてきそうなほど小気味よく、山田は右手を持ち上げる。

いや、わたしはこれで、じゃねーよ。

どんだけ自由だよお前。


「ちょっと待て」


呆れ気味に呼び止めると、山田は「え、なんすか」と立ち止まった。

早く大理石を掃除したいことが手に取るようにわかる。

右手がモップをひしと握っているからだ。

あー家中の大理石ぶっ壊してぇ。


「なんすか、じゃなくて」

「じゃなくて、なんすか」

「めし」

「めし?」

「俺起きてからなんも食ってねんだけど」

「あー、そういえばそうっすね」

「わかったら作ってこい」

「えー他の人に頼んでくださいよーわたしこれから大理石といちゃらぶすんすからー」

「お前に作れって言ってんの。命令だ。」


さもなくば大理石マジでぶっ壊すぞ。

と付け足せば、山田は渋々と言った様子で「わかりましたよー」と口を尖らせた。

コイツはホントに大理石がすべてか。


地球上の大理石を滅したくなってきた。