+++++
そこで、目が覚めた。
涙は出ていなかった。
けれど酷く、疲れていた。
「……嵐さん」
記憶の中ではない、現実の声が俺を呼んだ。
薄暗い部屋。月明かりのみの部屋。
だだっ広い自室に響いた声は、紛れもなく、山田の声だった。
「…………」
何も言わずに顔だけを向けた。
ベッドに横たわったままの俺を、山田が静かに見下ろしていた。
メイド服を着ている。しかし髪の毛は結んでいなかった。
そういえば山田は、雨でびしょ濡れになったから、風呂に行ってたんだっけ。
雨の降る中を、傘もささずに駆け寄ってくる、山田の姿が脳裏に浮かんだ。
あの雨の中で思った。
傘の中で思った。
あぁコイツが、俺の家族だったら。
こんなに寂しくなんか、なかったのかもしれないな。
……なんて。
そんなことを、一瞬でも。