隣の彼女がメイドだったんだけど。





「……ふざけんなよ…」


ギリッ、と。

奥歯を噛み締め吐き出した声は、地を這うようなものだった。

自分にこんな声が出せたのかと。

頭の片隅で、失笑するような声だった。


「ふざけてなどいない」


親父はじろりと、上目にこちらを睨むように、視線を持ち上げた。

俺は親父を見下ろした。

怒りと憎悪と、そういう感情をすべて剥き出しにしたような目を向けて。


「お前は……“俺等”をなんだと思ってる…」

「それを尋ねてどうする」


どうする。

どうするだと。


「嵐、話は座って聞け」

「……断る」

「すでに相手方、二宮の者と話はついている」

「……だからなんだよ」

「お前がどう足掻いても、決まったことだという話だ」


プツリ。

自分の中で、何かが切れるような音がした。


気がつけば床を蹴り、テーブルの向こう側へ回り込んだ勢いのまま、親父の胸ぐらを掴んでいた。

ガタンッとテーブルがずれる。

コーヒーがこぼれようが、テーブルクロスが汚れようが、もうどうでもよかった。