「なんで帰ってきた?」


出てきた言葉はそれだった。

投げやりのような、冷たさの塊で出来た言葉。

それはごく当然に、頭に浮かんだのを認識するよりも先に、口を突いて出た。

カチャリ。

親父は持っていたカップを、ソーサーへと置いた。


「……なんで帰ってきた。そうだな」


カップの持ち手は、握られたままだ。


「ここは、私の家だからな」


ハッ、と。

思わず鼻で笑った。


「まったく帰って来ねぇクセに、よくそんなことが言えんな」


コーヒーのカップを、思い切り投げつけてやりたい気分だった。

ここは私の家だからな。

どの口がそんなこと言ってやがる。

ここは私の家だからな。

聞いて呆れる。

反吐が出る。


「……私は、お前に嫌われているようだな」


感傷の意思もないままに、親父はカップから手を離した。

わかってんなら出て行け。

その意を存分に込め、目の前の人間を睨んだ。