「いいか、もう一回言うぞ。大理石は磨きすぎんな」

「えーなんでっすか」

「危ねーからっつってんだろ」

「滑る嵐さんが悪いんすよ」

「あ?」

「うわー今の嵐さんマジ柄悪いっすよ」

「誰のせいだと思ってんだ?」

「えー」

「言えって。誰のせいだって?」

「……わたしでーす」

「……マジでお仕置きが必要?」


耳を掴んでいた手をするりと滑らせ、山田の顎に持っていく。

そのままぐいと引き寄せる。

普通の女子ならここで顔を赤くするということを今までの俺なら当然だと思っていた。

が、山田はそういう女子ではない。

それはもう出会った時に把握済みだ。

現に、こちらに引き寄せられた山田は「おえー」とでも言いたそうな表情を浮かべている。

今すぐ噛み付いてやりてぇ。


「えーなんすか嵐さん素でそういうこと言っちゃう系男子っすか。うわー引くわー」

「うるせぇよ。」

「っていうか離してくれませんかねわたし続き読みたいんすよ」

「誰が読ませるか」

「えー」

「玄関とこどうにかしてこいまともに歩けねぇ」

「あーだから嵐さん裸足なんすね」

「あと廊下掃除したら絨毯敷け」

「大理石が隠れて見えないじゃないっすか」

「お前が大理石好きなのはわかった。敷いて来い。」

「えー」

「言うこと聞かねーとキスすんぞ」

「うわーマジ勘弁」