隣の彼女がメイドだったんだけど。






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走る車内から見える風景は、いつもより暗いように見える。

窓を流れる雨粒のせいで、よく見えないというのもあるか。

太陽を遮る分厚い灰色の雲。

そのせいで、5時だというのに街中の明かりはすでに点灯済みだった。


「どこか、寄られますか?」


運転席から声がかかる。

いつにも増して外を眺めていたせいだろう。

今更ながらに、よく訓練された運転手だなとか思いつつ、俺は「いや」と答えた。

車内の空調も完璧で、湿気をほとんど感じさせない。

いつも登下校に使っている車だが、内外共々、常に綺麗にされていた。


「……当たり前、だろうけど」


ぼそっとつぶやくと、運転手が「なにか」と尋ねる。


「なんでもねぇよ。っつーか、あんま俺ばっか気にしてると事故るぞ」

「これは失礼いたしました」


苦笑しながら、運転手は僅かに頭を下げた。

俺はもう一度窓の外へと顔を向ける。


当たり前だろう、金持ちにとっては。

頭を下げられることも、身の回りのことをしてもらうのも、部屋や車がいつも綺麗にされていることも。

当たり前なんだと、それすら考えたことがなかった。