「久宮様、さすがですわ!」
「あんなに綺麗な発音は聞いたことがありません!」
「イギリスに住んでおられましたの?」
「まあ、そうなんですの!?」
違ぇーよ。
内心でそう返答しつつ、昼食を口に運ぶ。
単にガキの頃から家でやることがなくて、とりあえず勉強してたってだけだ。
食堂は数えきれない人々でテーブルが埋め尽くされ、それでも雑多な雰囲気がないから、さすが金持ち学校といったところか。
そもそも、食堂と言ってもレストランのような内装に近く、システムもそれに同じだ。
テーブルに並ぶ昼食はどれも豪華で、不味いもの、安いものはひとつとして出されない。
今俺が食べている昼飯も、もちろん美味いんだろう。
残念ながら、味がしない。
周りを取り囲むヤツ等が鬱陶しい。
四方八方から好奇の視線が投げられる空間も、正直うざい。
自意識過剰と言えばそうなのかもしれないが、じゃあこの周りを取り囲んでるヤツ等は一体なんなんだって話だ。
別に。
別に俺は望んでこの家系に生まれたわけじゃないし、望んでこの容姿に生まれたわけでもない。
そんなワガママ贅沢だっていう人間も、そりゃいるだろうが。
っつーか、大半がそう言いそうなワガママだ。
俺だって理解している。
隣の芝生ってヤツだろ。
自分の持ってる芝生は、ヤケに色あせて見えるんだ。