『今日は1日中雨らしいっすよ』
朝、いつも通りの時間に俺を起こしに来た山田が、そう言っていたのを思い出す。
その言葉通り、朝から土砂降り、とまでは行かなくとも雨がしきりに降っていた。
4限目になっても、雨はまだ止んでいない。
めんどくせぇなと思う。
雨の日は外を自由に歩けない。
つまりは昼食時、いつもの管理塔に行くことが出来なくなるというわけだ。
今日は学食を使うしかないか、と諦める。
宮埜が「せいぜい頑張れよ」と笑っているのがわかる、ような気がした。
「……そしたら、えー、久宮」
呼ばれ、教科書へと向けていた視線を、教卓へと投げた。
視線は教科書に向けていた、だけだから別に教科書の内容は読んでないし、今なんの話をしていたかも聞いていない。
教壇に立つ教師と視線がぶつかる。
「……はい」
「この文、読んでみてくれるか?」
黒板を指しながら教師は言う。
黒板には、白や黄色のチョークで書かれた英文がずらりと並んでいた。
俺はと言えば、あぁ、そういえば英語の時間だったっけ。そんな感じだ。
ガタリと椅子から立ち上がり、黒板に書かれた英文を読み上げる。
周りがざわりと沸き立つ。
ピリオドまで読み終えると、教師が何か言う前に座った。
「……け、結構」
咳払いをしてから教師が言うのを、俺は頬杖をつきながら聞いていた。