普通のメイドなら絶対に起こしに来ない。

起こされたとしても、こんなにすぐには目覚めないだろうと自分でもわかっている。

自覚するほどに、俺は朝が弱かった。

酷い低血圧らしく、朝は本気でムリだ。起きれねぇ。起きたとしても機嫌が悪い。

今だって機嫌が悪い。

寝つきも悪い低血圧が、ようやっと眠りについたかと思った矢先に叩き起こされた、そういう感覚に陥るから。

カーテンを一気に開け放たれ、これでもかというほどに朝の輝かしい光を浴びせられれば、抵抗することも不可能な勢いで脳が覚める。

しかし、だからこそ機嫌が悪くなる。

ムリヤリ目覚めさせられることほど、嫌なことはない。

なのに、だ。

このはた迷惑なメイド、山田真子はそんな俺の不機嫌加減など、知ったことではないんだろう。


「あ、目ェ覚めてるじゃないっすかー。嵐さんおはようございまーす」

「…………」

「おはようございまーす」

「…………」

「おーはーよーうーごーざ「……はよう」


目が覚めたら一番に「おはよう」を言わなければ気が済まないらしい山田は、こちらが返事の挨拶をしなければそれを何度でも繰り返す。

そんな大事なことじゃねーだろ。せいぜい2回で充分だろ。

目覚めたばかりでイライラしてるっつーのに、山田が「おはようございます」を繰り返すから、俺はめんどくさいのを回避するためにしょうがなく挨拶を返す。

すると山田は決まって、


「朝から元気なさすぎっすわーおはようすらまともに言えないとかないわー」


とか呆れたような口調で言ってくるからマジでムカつく。

そのままベッドに引きずり込んでやりてぇ。


……まあ、そんなことしたところで、コイツが焦るとも思えないが。