歩く速度が同じくらいになると、自然、山田が隣を歩くことになった。
真横を見たくらいじゃ山田の頭も視界に入らない。
少し視線を下げて見れば、山田の小さな頭がようやく視界に入った。
ホント、小さい。
小さいくせに、態度はデカイ。
守ってやりたくなるようなヤツでもない。
なんで気になったのかわからない。あまつさえ、なんで好きになったのかも不明。
ただ、あの学校の書庫で見つけた山田の姿に、何かを感じたのは事実だ。
それがなんだったのかわからない。
だから答えも見つからない。
時折見かける、山田が本を読みふけっているその横顔。
その横顔に、ふと何かが脳裏を過る感覚がする。
しかしそれを掴み切ることが出来ず、結局は面倒で考えることを放棄する。
いろいろと、グダって考えることには向いてない。
山田真子を好きになったのは確実で、だったらそれでいいんじゃね?
「あー今日の夕飯なんにしましょうかねー」
「なんでもいい」
「はあ…なんでもいいっていうのが一番困るんすよー特に嵐さん好き嫌い多いですし」
「嫌いなモン以外なら食うからいいだろ」
「嵐さん知ってますか。それって実はなんの解決にもなってないんすよ。主に今日の夕飯をどうするか的な意味で」
「山田が作るモンなら食うよ、なんでも」
「じゃあカップラーメンでいいっすか」
「却下。」
「っつーかそれお前はお湯入れるだけだろーがそれ作ったって言わねぇよ。」「そんじゃあ何が食いたいんすかー」とかなんとか、なんの中身もないような会話をしながら廊下を歩く。
誰かと会話をしながら家の廊下を歩いたのは、そういえば山田が初めてだった。