……いや、山田の一言一句に何故かツッコミ入れてしまう俺も俺か。

山田に会うまではこういうキャラじゃなかった気がするんだが……っつか確実に違った。

やっぱどう考えてもコイツが元凶。いろいろと調子が狂う。


山田はモップを両手で持ったまま、辺りをキョロキョロし始める。

何を探しているのかと思えば。


「……で、嵐さん。ここどこっすかね?」


もうため息も出ねぇ。


「……どうでもいいから黙ってついてこい」


山田ひとりに戻らせようとすればまた迷子になりかねないので(というか数日前に実際あった)、不承不承と俺は回れ右をする。

元来た道を歩き始めると、山田は素直に後をついてきた。

少し前にも話したが、山田は小さい。つまり歩幅がまるきり違う。

俺が普段歩く速度だと山田が小走りにならなければいけないようで、後ろをついてきていた山田の足音がゆっくりしたものから速度を上げた。

なんつーかその足音が小動物っぽくて可愛い。

わざとこのまま歩いておいてやりたかったが、


「ちょっと嵐さんマジねーっすわ自分の足の長さ自慢したいんすかそうすっか。ないわー」


とか背後から淡々とした罵倒が飛んできたので、ため息をついて立ち止まる。

振り返ると、山田は少し後ろの方から小走りに近寄ってきて、立ち止まった。

なんだかんだ言いつつ素直に後をついてくる山田はホントなんか、いじめてやりたくなる。


「これでまたわたしが迷子になったら今度こそ嵐さんのせいっすよ」

「はいはい悪かったな。」


どうしても俺に責任転嫁したいらしいコイツの思惑にハマりたくもないので、しかたなく、山田の歩く速度に合わせて歩くことにした。