隣の彼女がメイドだったんだけど。





それよりも。


「っつーかなに、山田。天文台行きてぇの?」


ふと思って尋ねると、山田はモップを両手で握り首をかしげるような仕草を見せた。

脇に抱えたせんべいの袋が耳障りな音を立てる。


「んー…まあどんなところか気になるってだけっすね」

「ふぅん」

「嵐さんも見てみたくないっすか?金持ち学校の天文台」

「まあ……ホントにあれば、の話だけどな」


去年、探したことがある。

ということは、なんとなく黙っておいた。

言うとまたうざそうだし。


山田は「そうっすか」と気のない返事をして、不意に思い出したかのごとく、自分の首に手を持っていく。

それから何かを引っ張る。メイド服の胸元から懐中時計が現れた。

慣れた手つきで懐中時計を開き、時間を確認する。


「うわーもう夕飯の時間じゃないっすかーどうりで腹減ったと思ったわーないわー」

「今の今までせんべいバリバリ食ってたヤツが何を言ってる……?」

「せんべいは非常食っすよ。はあ……嵐さんが無駄話ばっかりするからこんな時間に……」

「自分のことは棚に上げて全部人のせいにしてんじゃねぇよ元凶。」

「大理石が素敵すぎるのが悪いんすよ。大理石……罪なヤツめ……」

「俺に責任転嫁出来なかったからって大理石に罪被せるお前の愛マジで歪みすぎだろ。」


「最近嵐さんのツッコミスキルが上がってきてボケる方も一苦労っすよ」とかなんとか山田が言うので「どう考えてもお前のそれ素だろ。ボケじゃねーだろ素だろ。」っつっておいた。

っていうかこうやって無駄な話が多いから時間が無駄に過ぎて行くんだよ。漫才やる気はねぇっつってんだろ。