隣の彼女がメイドだったんだけど。





振り返って「なんだよ」と尋ねる。

宮埜はくるりと椅子を回してこちらを向くと、背もたれに寄り掛かったまま口を開いた。


「山田ちゃんとかってどこで寝てんの?」

「離れ」

「離れ?別荘みたいな?」

「違ぇよ。昔隣に住んでた家族が引っ越して空き家になってたところを買い取ってんだ。基本従者はそこに泊まってる」

「ふぅん」

「……なんだよその顔。」

「いーや。久宮のことだからてっきり山田ちゃんだけ自分の部屋にでも寝かせてんのかと思って」

「しねーよンなこと」

「意外と奥手か?」

「食いたくなんだろ」


ひゅいっ。

宮埜は口笛を吹いてにやりとした。


「最近の高校生はコワイなー」

「一般論じゃねーよ」

「金持ちだからか」

「俺だからだろ」


にやり。

お返しに口角を持ち上げると、宮埜は両手を上げて呆れたように笑った。

それを見届け、今度こそ扉を開けて外へ出る。

何気なく見下ろしたらせん階段は、やはりどう見ても牢獄への階段にしか見えない。

宮埜はどう考えても引きこもりだ。

俺は首に手を当てて軽く捻り、ため息をついてから階段を下りる。

遠くの方で、2限目終了の鐘の音色が響いていた。