いつになったら落ちんの?


山田の瞳を見つめながら、問いかける。

我ながらおかしな質問だと思う。

落ちるとか落ちないとか、それがいつだとか、そういうのがわかるようなら、俺はこんなに苦労してないし。

ホント、生まれてこの方、こんだけ尽くしてやってんのも、お前くらいだからね、真子さん。

山田は何も言わない。何も言わないまま、少し視線を俺から逸らした。

何かを考えているようなその行動。

しばらくそうしてから、不意に「よいしょ」と腰を上げ、ずりずりとこちらに近づいた。

それからもう一度、俺を見上げたかと、思えば。


「――ッ」


思い切り引っ張られた。

膝立ちで伸び上がった山田に、両手で襟首掴まれて、グイッと、引き寄せるように。

そうして、ぶつかるみたいに重なったのは、唇。

まさに不意打ちだった。

不意打ちの、キスだ。


「……って、ことでどうっすか」


至近距離で見つめ合う。

山田のしてやったりな表情が、ヤケにムカつくっていうか、超ムカついた。

してやられてばかりでは、残念ながら、俺らしくないので。

お返し、と言わんばかりに、


「ダメ」


山田の華奢な肩を押して、そのままベッドに組み敷いてやった。

ないわーとでも言いたそうな山田の表情に、けれど俺はどいてやらない。


「ちゃんと言え。じゃないと許さねぇ」

「えー」

「言うまで眠らせないけど」


どうする?と口角を持ち上げれば、山田はむうと口を尖らせた。

どうやらコイツは、大理石には好きだとかなんだとか言えるけど、俺に対しては言えないらしい。

……なんだ、コイツも照れるんじゃん。

そう思ったら、さらに山田が可愛いかったので、


「……じゃあ言いますけども、嵐さん、」


――好きです。


と、言おうとした彼女の唇を、狙ったように塞いでやった。


まあ、言わせて寝かせる気は、実を言うと、さらさらない。