「……この間見つけた本」彼女は静かに、問いかける。「本当に、お父さんが捨て忘れてただけなんて、思ってますか?」
俺は首を振った。何度も横に振った。
わかっている。
わかってるさ。
――もう、ずいぶん前からわかってた。
親父が、
夜遅くまで仕事をするのは、母さんと居た家を手放さないためだと、
夜に起きている俺を見つけては、「早く寝なさい」と厳しく言うくせに、たびたび様子を見に来ていたことも、
肌身離さず持っている、家族写真のことも。
全部。
そう、全部だ。
バレてんだよ、クソ親父。
悪態をついた俺に、山田は少し、笑った。
「……強がって隠すのが得意な、不器用な親子っすね」
似てるんすよ、嵐さんとお父さん。
そう言った山田に、けれどイヤな気はしなかった。
……似た者同士はめんどくさいな。
なんて、思っただけだった。
わかっていたのに、強がっていなければいけなかった。
そうでもしないと、どこかで折れてしまいそうだったから。
でも、それもそろそろ、飽きたよな、親父も。
俺も。


