「……で、何が内緒だって?」
「えーっと、内緒は内緒っすね」
「じゃあ聞くけど、お前誰に向かって内緒とか言ってんの?」
「え、嵐さんっすけど」
「お前の立場は?」
「メイドっす」
「じゃ、俺の立場は?」
「あるじっす」
「わかってんなら理由言え」
「理不尽極まりないっすわー」
「お前に拒否権はねぇっつってんだろ。」
言え、と命令すると、山田はむうと口を尖らせる。
拗ねた時のクセがやたらと可愛い。
キスしたいのはもちろんだが、今は山田の“メイドになった理由”とやらを聞き出す方が先だ。
山田はしばらく渋ったものの、諦めたように口を開いた。
「……嵐さんのお父さんに言われたんすよ」
「……親父に?」
なんて、と続けた俺に、山田はこう続けた。
「――“嵐の傍に、どうか一緒に居てやってくれ”って」
思っても見なかった、親父の言葉だった。
山田の視線が俺を射抜く。
俺は山田を見つめたまま、手の小指すら動かせなかった。
「……それ」ようやく喉から絞り出した声は、驚くほどに掠れていた。「嘘だろ」
「マジっすよ」山田はハッキリと答えた。「嵐さんのお父さんが、そう言ったんすよ」
依然として、俺は動けないまま。


