隣の彼女がメイドだったんだけど。





俺がそう言うと、山田からブーイングが上がった。

あーなんか昔もこんなヤツだったっけ。

自慢しに持って来た本を読んで聞かせて、『ね、嵐、おれ超すごくない?』とか言ってる山田に『え、そう?』とか俺が返せば、このブーイングが上がっていたような。

当時から山田のうざさは異常だった。

懐かしいな、と少しだけ、思う。


「……じゃあ」ふと思いついた質問を、何気なく。「その延長線上で、メイドになったのか、お前」


自分のことは二の次で、俺を元気づけるために毎日遊びに来ていたらしい山田だ。

その世話焼きが高じてメイドになったというのなら、それはたしかにうなずける。

しかし、山田の答えはノーだった。


「そんな理由でメイドやるならメイド喫茶行ってますわ」


それは“メイド”と言う意味でしか繋がってない気がするのは俺だけだろうか。


「理由は別にありますよ、別に」

「別に?」


復唱すると、山田は首肯してみせた。

首肯してみせたものの、続く言葉を言おうとしない。

なんで言わないんだコイツ、と思っていると、山田の視線がすいっと泳いだ。

……なるほど。


「理由は言わないつもりか」

「え、いやー、言わないつもりというか」

「というか?」

「そういえばこれは内緒だったようなー」


てへぺろ、と山田はおどけてみせた。

ふーん、と俺は納得して。

ずいっと腰をかがめ、山田と至近距離で視線を合わせた。