隣の彼女がメイドだったんだけど。





「別に、わたし的には悲しいこと、ひとつもなかったですし」


そう、山田はけろりとした顔で言った。


「たしかに親は離婚しましたけど、お互い会おうと思えば会えますし、何より金持ちっていうのがそりに合わなかったんで、普通の家になってひゃっほーいって感じでしたね」


やはりコイツはコイツだった。


「で、わたしは自分のことより何より、一番気になってることがありましたしね」


意味ありげな瞳で、山田は俺を見据えた。

俺は頭を傾け、山田を見返す。


「気になること?」

「そうっすよ」


山田は依然、得意げだった。


「隣の家のお坊ちゃまっすよ」


気に食わない、と言いたかった。

お坊ちゃま、というのがムカついた。

が、山田の言う“隣の家のお坊ちゃま”というのは、つまり。


「……俺?」

「そうそう」山田は二回うなずいた。「嵐さんが超気がかりで、自分に構ってらんなかったっすわ」

「いや、意味わかんねぇし。」

「考えてもみてくださいよ。いいっすか、お隣のお母様が亡くなって、それに合わせて超絶なまでに元気なくなって死んだ魚みたいな目をしてるお隣のお友達を思い浮かべてみてくださいよ。どうっすか、気にかけずに居られますか」


どう考えても無理だった。


「ゆえに、わたしはあれこれとお世話を焼くようになったんすよ。超ありがたい話っすよね、褒め称えるべきっすわ」

「そうだな、お前が自分でそれを言わなかったら超褒めてたな。間違いなく。」