隣の彼女がメイドだったんだけど。





山田の頭をガッ!と掴んで言うと、山田は「わかりましたよー」と口を尖らせた。


「簡単に言うと、わたし昔は男装してたんすよ」

「…………。はあ?」


返ってきた意味不明な答えに、思わず山田の頭から手を離した。

山田は荒れた髪の毛を撫でつけながら、続ける。


「嵐さんも覚えてると思うんすけど、うちは昔まあそこそこの金持ちだったわけっすよ」

「……まあ、そうだったな」

「で、暮らしも裕福で、わたしは困ること何一つなかったんすけど、親的には困ることがあったっぽいんすよね」

「…………?」

「跡継ぎ問題っすよ」


なるほど、と思った。


「うちには子供がわたししか居なくって、跡継ぎに困ってたんすよね。で、それが原因でうちの立場が危うくなりかけてたんで、しぶしぶわたしが男子のフリして、その立場を維持してたってわけです」

「……無謀な賭けだな」

「そうなんすよ。まあ無謀も無謀すぎでして、わたしが成長するにつれいい加減バレちゃいまして、ひと悶着あって、結局親が不仲になって離婚してしまいまして、わたしの苗字が変わりまして」


なのでわたしの性別は事実上変わってないっすよ嵐さん超安心っすね。

と山田が無表情の上に得意げな顔を僅かに載せて、親指を立てて見せた。

そういうことだったのか、と納得する。

が、同時になんとなく、居たたまれない。


「……ってことは、お前の家もいろいろあったってことか」

「まあ、たしかにいろいろありましたけどね」

「なのにお前、一回も泣かなかったな」


言うと、山田はぱちくりと瞬きを繰り返した。

まるで、意味が分からない、とでもいうように。