山田が書庫へと足を踏み入れる。
当然、引っ張られたままの俺も書庫へと入った。
書庫に入って、ふと気づく。
そういえば、夜なのに明るい。
書庫のどこにもライトはない。
灯火もなければ、山田が懐中電灯を持っているわけでもなかった。
じゃあ、だとすればどうして。
書庫の中は、こんなにも明るいのか。
「嵐さん、上っすよ、上」
書庫の中心部まで歩き、立ち止まった山田が、不意に上を指さした。
上?
不思議に思いながらも、つられて上を見てしまう。
そうして、目を見張った。
そこにあるのは、天井ではなかった。
天井があるはずの真上に、星空が広がっていたのだ。
ぐるりと一周、一面の夜空。
数えきれないほどの輝きが、書庫を照らしていた。
思わず息を呑む。
瞬きすら忘れていた。
見上げた夜空の風景に、恐怖すら感じるほど。
小さな自分の、小さな悩みも、バカみたいに思えるほどに。
その星空は、綺麗だった。
「……ね?」山田が言う。「天文台、あったんすよ。ずっと。ここに」
山田は星空を見上げて、静かに続けた。
「――この星見てると、なんかいろいろ、どうでもいいなあって、思うよね」
……――あぁ、そうか。


