それから見せてもらった録画には、山田の圧倒的戦闘力がこれでもかというほど映っていた。
あのバカはナイフとフォークを何本も器用に扱いながら、黒の集団をさくさく倒していた。
まるで映画のワンシーンのように。
『山田ちゃん、仕事も完璧な上に、これだけ戦えるとなると、かなり重要人物だな』
椅子の腕置きに頬杖をつき、そう言っていた宮埜の言葉が、記憶に新しい。
そんな昼間を過ごした後の、現在。
俺は何故か夜の学校に居た。
何故か、というのはおかしいか。
すでに理由は知っていたから。
山田が言うのだ。
『嵐さん嵐さん、わたし見つけたんすよ、天文台』
昨夜の圧倒的戦闘力などどこへやら。
本日の山田は至って普通の、いや昨日もいつも通りだったが、とにかく普段通りの調子だった。
で、あの幻の天文台を発見したから、夜に一緒に見に行きましょう、とか言うので今に至る。
夜のひっそりとした学園内。
すでに宮埜には了承を得て、学園内を歩いていた。
前を歩くのは山田。
歩幅がかなり違うので、俺はゆっくりと、山田の歩く後ろ姿を追いかけた。
普通に歩けるのはとっくにわかっていたが、昨日の後遺症でも残っていたらどうしてくれようと思っていた。
違和感ひとつなく体は動くので、育成科の武器は人にヤサシイ作りをしているらしい。
それにしても、昨日は本当に散々だった、と思う。
なんとなく塞ぎ込む。
昨日だって、昔だって。
結局誰かに、護られていないと生きていけないのか、俺は。
山田に、母に。