「…なんだっけ?」
「ええ?まさか本当にきいてなかったの?なんかユウキ最近ヘンね。あ、昔からか」
ミサキは怒るわけでもなく、ただ笑った。
その顔にまた鼓動が高鳴る。
「ふふ。日誌の話だよ。あとはユウキだけだから早く書いちゃって」
「わかった」

そこで俺達の会話は終わり、教室は静寂に包まれた。
ミサキは俺が終わるのを待っていてくれるのか、静かに本を読んでいた。
俺が紙にペンをはしらせる音とミサキがページをめくる音、運動部の掛け声だけが僅かに届く教室は高ぶっていた気持ちを徐々に静めてくれて。
顔にあった熱が消えてゆく。

それでも頭の中では、ミサキの字って綺麗だなとかさっきの笑顔とか怒った顔や困った顔とか、そんなことがぐるぐると巡っていた。







俺がこの気持ちに気付くのは、そう遠くない未来のことだった――。




END   2012.3.21.