「秦」
目の前に差し出された缶コーヒーで俺は顔をあげた
辺りはすっかりと明るくなっている
廊下を埋め尽くすほどいた桜もいない
「千秋が学校行かせた
さすがに全員で休んだらおかしいだろ」
「・・・・そうっすね」
廉さんが俺の隣に座る
「波夏とりあえず山は越えた
後は波夏の気力次第だな
心配すんな
あいつは死にゃしねえよ
そんなやわじゃねえ」
俺だってそう思いたい
「そう言えば海竜が目覚ましたってさ
命に別条はない
まあ骨は何本かいってるみてえだけど」
「そうっすか
よかったです」
「行ってきてやれよ
波夏の代わりに」
「え?」
思ってもみなかった言葉に戸惑う



