「翼」
櫂が目の前にいて、私は驚いて目を見開いてしまった。
「かかかかか、櫂っ⁉」
自分でもびっくりするくらい驚いた。
「な、なに?」
「ははっ…"なに"ってひどくね?
久しぶりなのに」
櫂はニコニコと、中学のときには見せなかった笑顔で話しかけて来た。
櫂、変わった。
前まではあんまり笑わなかったのに…
まぁ3年も経てば変わるか。
でも、なんか違和感。
「翼?難しい顔してどうした?」
優しいところは相変わらずだ。
「おいおい櫂、親友の俺様を忘れんな」
間に入って来たのは、馬鹿奏人。
うるさいなぁコイツ。
しかも、櫂の親友は私だし!
「奏人、久しぶり。元気だったか?」
「ああ。お前も元気そうで良かった」
二人の会話に、女子からはキャーという歓声が教室に響いた。
こ、鼓膜が…
「櫂くん、帰ってきたね」
優愛が私にニコリとして、話しかけて来た。
「うん!」
満面の笑みを優愛に見せると、優愛もちょっと微笑んでくれた。
「あ、南もいたんだ。久しぶり」
「久しぶり」
二人はお互いそっけなく挨拶をした。
この二人は昔からあんま仲が良いとはいえない。
なんでだろ?
櫂も優愛のこと、苗字で呼ぶしさ。
