そこでそういう問題が起きないように考え出されたのがドント方式である。
分かりやすいように単純な例にしよう。
A,B,C3つの政党が比例代表で争ってそれぞれ300万、200万、100万という得票を得たとする。

ドント方式というのはこういう計算法である。
まず各党の得票数を1で割る。
1で割ったらそのままの数字だから、A300万、B200万、C100万である。
この割り算の答が一番大きいのはA党の300万だから、まずA党が1議席を得る。

同じような割り算の2巡目を引き続き行う。
ただし前の巡で議席を得た政党は「いくつで割るか」の数字を1ずつ上げていく。
2巡目ではA党の300万票を1+1の2で割る。つまり150万になる。

B党、C党はまだ議席を得ていないので、÷1のまま。
2巡目の結果はA党150万、B党200万、C党100万になる。
今回割り算の答が一番大きいのはB党だから、2巡目ではB党が1議席獲得。

3巡目では、A党の割る数は2のまま。
B党は前回1議席得たので÷2に変わる。
C党はまだ獲得議席がないので÷1のまま。

3巡目ではA党の数字は150万。
B党は100万、C党も100万。
同数の場合、両方とも1議席という方法と、まだ議席を得ていない党に優先して配分という二つの方法がある。
日本ではどうなっているか分からないが、ここでは後者だったとしよう。
C党が1議席獲得。

4巡目では、A党は300万÷2で150万。
B党は200万÷2で100万。
C党は今度は100万÷2=50万。
再びA党の数字が最大になるので、ここでまたA党が1議席獲得。

こういう計算を、100人選出するのなら100回繰り返すわけだ。
この計算の仕方をドント方式と呼ぶ。
現時点での日本の衆議院、参議院とも比例代表部分の議席配分はこうやって決められる。

小選挙区と比例代表の関係を「並立」「併用」「連用」どれにするとしても、このドント方式という計算・配分方法が大前提になる。
これから新しく有権者になる若い人は是非覚えておいて欲しい。

ちなみに先日再選挙でニュースになったギリシャの国会選挙制度は比例代表オンリーである。
ただしギリシャは少し変則的で、比較第1党、つまり一番得票率が高かった党がまず50議席を優先的に配分される。
議員定数は300なので、残りの250議席をドント方式で各政党に配分する。

ギリシャは昔から政党の数が多いので、第1党に下駄を履かせて政局を安定させようという知恵だったとも言われるが、この前のように国論が五分五分で分裂している状態だと、第1党の議席数がかさ上げされ過ぎてしまい、かえって政情が不安定になる危険もあるようだ。