さらに悪い事に無能な管理職や経営者は、ある部署の戦力の大きさを労働者の頭数でしか測れない。
 たとえば60人いる部署の半分が、普通の正社員でないからという理由で単純な仕事しかさせてもらえない、したがって経験がない、という人員である場合、「60人もいればこのプロジェクト出来るだろ」と言って上から仕事が回って来たとする。

 大事な仕事であれば、頭数は60人でも実際の戦力として使えるのは30人である。
 当然普通の正社員は通常の二人分の仕事をしないとプロジェクトが回らない。毎日深夜までの残業、休日出勤は当たり前になる。

 普通の正社員でない人たちは内心「いやあ、あれなら自分でも出来る事があるんだけどなあ」と思いながらも、やらせてもらえないから見ているしかない。

 そんな職場に若い派遣社員が新しくやって来たとしよう。その人の目にはこう見えるはずだ。
「うわあ、正社員って、安定した身分と世間並の給料と引き換えにあんな過重労働しなきゃいけないのか。ありゃそのうち過労死か自殺だな。だったら貧乏でも派遣のままの方がいいや。人間命が一番だもんな」