問題は、現在所得税の支払いを免除されている程に低所得な人にはどうするのか?という点だ。
 所得税が免除される年収額は、地域や結婚しているか、扶養家族がいるかなどの条件で違うのだが、おおむね年収130万円未満というケースが多い。

 既に所得税を払っていないのだから、所得税をおまけしてあげようがない。まして無職で収入ゼロの人は、何もメリットがない。
 こういう人たちでも消費税が上がれば負担増になる。さあ、どうする。

 ではお金を上げましょう、国庫から。これが「給付付き」の意味である。
 仮に年収が129万9999円で所得税が免除されている人には、一定のお金を政府がくれるわけだ。

 こういう考え方そのものは「負の所得税」と言って、先進国の中には導入している国はいくつもある。
 だが今の日本でこれを導入したら、モラルハザードの拍車をかけるだけだという気がする。

 たとえば働こうと思えば働けるのに、なまけて無職でいる若者がいるとする。
 税務署に「年収ゼロ」と申告すれば、自動的に毎月「給付付き税額控除」の給付分がもらえる。
 この若者、真面目に就職して働こうという気になるだろうか?

 弱肉強食社会のイメージが強い米国でも「負の所得税」にあたる制度はある。
 しかし米国のそれはあくまで「勤労収入」に対する給付であって、働いて得た所得を税務署に申告した人だけが給付金を受け取れる制度である。
 つまり失業者や意図的に無職でいる人はお金はもらえない。

 他の国でもあくまで「働いているのに極端に低収入な人」に現金を給付するという趣旨であって、怠け者の「自業自得の貧乏人」には給付金など渡さない。
 民主党の提案する「給付付き税額控除」はこの点をちゃんと保障できるのか?