「あっ。
すみません!」

誰かの背中に
ぶつかったようだ。

「あぁ。
ごめんな。」

どこかで聞いた事の
ある声だ。
けど、顔が光のせいで
見えなかった。
が、あちらは
私の事が見えたそうで
慌てて顔をそらした。

「?」

どうしたんだろう?
とか思っていると、

「ちょっと百合ーっ!」

ドンっ。
と、ダブル攻撃のように
瑠香が私の肩を
カバンで叩く。

「いったぁー。
何すんの〜。」

「ごめんごめん!
それより!さっき
百合とぶつかった人
かなりイケメンだったよ!?」

へぇ〜…
って!
私見てませんけど?

「あれはモテるね♪」

「興味なーいっ。」

「えぇ!
もったいないなー。」

とか言ってるうちに
学校に着いた。


入学式会場は
セッティングしてあって
とても綺麗だった。

式が始まり、
個別で名前を呼ばれる。
この時が一番嫌いだ。
だって声とか
裏返ったらどうするん…

1組だ…
私のクラス。
瑠香も一緒だ。
しかも隣!
私、厘藤 百合(リンドウ ユリ)
ですからねっ。
『り』と『わ』って
近くない!?
奇跡だよねっ。

「百合っ!
朝の人!」

あのぶつかった人だ。

「へぇ、カッコイイ?
んじゃないかな。」

「百合、眼下行った方が…」

一組はとっくに
過ぎていて、
三組の名前を呼ばれていた。
先生がどんどんと
名前を呼んでいく。
途中、耳を疑う名前を
聞いた。


「仲島 優さん。」

それは朝ぶつかった
男の人だった。

「あの人、優って
名前だって!
って、百合?」

私の耳は
瑠香の名前も
聞こえないくらい
大きな脈をうっていた。