唖然として千鶴を見つめるわたしに、千鶴の顔が近づく。 間近に迫る美しい顔。 きめの細かい肌。 下向きに伸びる長いまつ毛。 ふわり。 いい香りがする。 「でも、嫌いじゃないよ」 耳元に寄ったくちびるに、直に言葉を流し込まれた。 首筋に息が触れて。 わたしは慌てて飛び退いた。 千鶴が笑う。 「百面相」 くくっと喉を転がす、小馬鹿にしたような笑い方だ。 「あ、あんたねえ‥‥っ」 「顔真っ赤」 指摘されて、わたしは手のひらで顔を覆った。 ――やっぱりこんな奴、可愛くなんかない!