千鶴がくるりと背中を向けて、歩き出す。 すたすたすた。 「帰るの?」 「ああ」 わたしも帰ろう。 サボってしまったものは、もうどうしようもないし。 立ち上がってお弁当を拾い上げると、ねえ、と言われた。 「あんた、名前は?」 扉に手をかけた千鶴が、こちらを見ている。 「藤木奈々子」 答えると、千鶴はくちびるを笑みの形にした。 「じゃあまた、菜々子」 「あ、うん――」 そうして千鶴はスカートをひらりと踊らせて。 扉の向こうに、消えた。