よく見ると、千鶴は手ぶらだった。 確か、教室でコンビニ袋を出していたはずだけど。 「‥‥お昼ご飯は?」 「教室に忘れてきた」 ああやっぱり。 わたしはため息を吐いた。 千鶴の視線が痛い。 彼女はなぜか当然のように、わたしに期待しているのだ。 彼女を助ける義理なんかない。 むしろ昨日は酷い目に合ったし。 このまま知らんぷりして立ち去ってしまおうか。 わたしは、迷いながら口を開いてーー。 「‥‥わたしのお弁当、半分食べる?」 ――バカ! わたしのバカ!