「ねえ」
千鶴がわたしを見つめて言った。
「校内を案内して欲しいんだけど」
彼女の手がわたしの腕を掴む。
ぐっと引っ張られて。
「え、いや、待ってよ」
わたしは抵抗した。
こんな無理矢理に連れていかれてたまるか。
わたしは家来じゃないんだぞ!
千鶴の眼光が鋭くなる。
しかし次の瞬間には、微笑みを浮かべた。
大輪の華が咲くような笑顔。
それはもう、綺麗な。
「お願い」
わたしは無意識に唾を飲み込んだ。
美人の笑顔には迫力がある。
有無を言わせないような迫力が。
「わ‥‥かった」
思わず了承してしまって。
わたしは千鶴に手を引かれ、教室を出たのだった。
