振り返ると。

予想通り、中里先生がいた。


「今日は図書室に来たんですねえ!」

ユカがわかりやすくテンションを上げて。

「あー、すみません」

わたしはとりあえず謝っておく。

「お前ら、驚いたふりくらいしろよ‥‥」

先生は軽く肩を落とした。



「先生、それなんの本ですかー?」

可愛らしく首を傾げるユカの言葉を聞いて、先生の手元に目を向ける。

そこには、文庫サイズの本が一冊。

「これは、さっき生徒から奪い返してきたんだよ」

「へええ~」

「貸し出し期限過ぎても本返さないのがいるんだよな、まったく」

先生がひらひらと本を振る。


――うっ。

なんだあの表紙。

血まみれの目玉がこっち見てるんだけど!


しかも、その絵柄には見覚えがあって。

「その本借りてたのって、もしかして‥‥千鶴?」

「お。よくわかったなあ」


やっぱり。

千鶴の部屋のカラーボックスに積まれてたやつだもん。